こんにちは。
このところ、「103万円の壁」を178万円に引き上げる案が国会で議論され、話題になっています。
私も各メディアから、所得税の仕組みや、103万円の壁が見直された場合の試算を依頼され、夜な夜な算出しておりました。
今回のコラムでは、103万円をはじめとした年収の壁について、概要を解説したいと思います。
【103万円の壁とは?なぜ今議論されているの?】
年間で103万円を超える収入があった場合には、所得税が発生する
というのが103万円の壁です。
扶養されている場合は、壁を超えて働くと、夫(妻)や親の所得税の扶養から外れることになります。(社会保険料は別の基準があります)
また、企業によっては配偶者の年収が103万円以下の場合、家族手当を支給しているところもあります。
パートやアルバイトで働く主婦(夫)や学生は、所得税や扶養に影響が出る103万円を超えないように働き控えが起こっている現状があります。
103万円の年収基準はここ30年間、変わっていません。
それなのに賃金が上がっているため、昔より働く時間が短くなってしまっています。
こうしたことから、人手不足を解消し、働き手の手取りも増やせるように103万円の壁を引き上げるというものです。
【他もある年収の壁】
実は103万円以外にも、様々な年収の壁があります。
- 「100万」
- 「103万」
- 「106万」
- 「130万」
- 「150万」
- 「201.6万」
の壁の存在です。
表にまとめて影響の度合いを色別にしてみました。
こちらの表をご覧ください▼
年収 | 学生 | 主婦・主夫 |
100万円(自治体により異なる) | 住民税が発生 | 住民税が発生 |
103万円 | 親が扶養控除を受けられなくなる | 所得税が発生する |
106万円 | 配偶者の社会保険の扶養から外れて、勤務先の社会保険に入る義務が発生する(勤務先の従業員が51人以上の場合) | |
130万円 | 親の社会保険の扶養から外れて、勤務先の社会保険への加入、または国民健康保険に入る義務が発生する | 配偶者の社会保険の扶養から外れて、勤務先の社会保険に入る義務が発生する(従業員が50人以下の場合) |
150万円 | 配偶者の配偶者控除の額が減っていく | |
201.6万円 | 配偶者特別控除が受けられなくなる |
上記の表で、収入に対するインパクトが比較的小さいものは青字で、インパクトが比較的大きいものは赤字で表示しています。
【100万円の壁】
収入が100万円を超えると、超えた分に対して約10%の住民税が発生します。
例えば、年間101万円を稼いだ場合、100万円を超えた1万円に対して約10%の住民税が発生します。
他にも均等割という住民税が収入の額に関係なく一律で5000円かかります。(自治体によって異なります)
結果、約100万4000円の手取り収入となります。
【103万円の壁】
年収が103万円を超えた場合、所得税が発生します。
こちらは103万円を超えた分に対して5%かかり、年収が増えるとこの割合が増えていきます。
(学生は勤労学生控除があるため、130万円まで所得税がかからないようになっています。)
また、親に扶養されている学生の場合、親の特定扶養控除が受けられなくなります。親の所得税率が10%の場合、年間約10万円の手取りが減ります。
【106万円の壁】【130万円の壁】
こちらは主に主婦(夫)に対して発生する壁です。(130万円は学生も影響します)
この壁を超えたり、労働時間の要件を満たさなかったりすると、配偶者や親の社会保険の扶養から外れます。
そして、勤務先の社会保険、もしくは国民健康保険と国民年金に加入することになります。
106万円か130万円かは、パートやアルバイト先の従業員の人数が51人以上かどうかによって異なります。
職場の社会保険に入る場合、年収106万円だと年間15万円くらいの負担をすることになります。
このため、手取り収入は減ることになりますが、将来的に年金が増えたり、様々な保障が受けられたりするメリットがあります。
また勤務先も同額を負担しているため、給与所得者が払う保険料は半額ですんでいます。
【150万円の壁】
150万円の壁というのは、配偶者特別控除の壁になります。
この壁を超えて収入があると、超えた額に応じて配偶者特別控除の額が少なくなります。(扶養している人の手取り額が減っていきます。)
こちらも150万円を超えても段階的に縮小していくので、金額的なインパクトはそれほど大きくはありません。
【201.6万円の壁】
配偶者特別控除がゼロになる壁です。
配偶者の扶養による減税が全くなくなる金額になります。
まとめ
いま存在している様々な年収の壁についてまとめてみました。
今後の議論のゆくえに目が離せません。
様々な年収の壁がわかりやすく整理されて、働きたい人がより働きやすい社会になるといいと思います。